リゾート(stay)と観光(tour)
リゾートは、① たびたび行く先、② 長期滞在先という、2つの空間を意味すると思います。
resortは、もとは14世紀後半の古い仏語で「援助や安全のためのモノ・人」「援助を要請する行為」を意味したそうです。現代でも、英語の resortは、「訴える」「頼みにする」あるいはlast resort「最後の手段」など、たしかに法律用語風にも使われます。
これが、保養地・避暑地・リゾートを意味するようになります。あるとき、仏語resortが突然変異!を起こして、保養地・避暑地・リゾートを意味するようになりました。
つまり、1語であったresortのre「再び」とsort「出ていく」が分解し、「再び出ていくこと」を意味しはじめました。言語ではよくあることで、back-formation(逆成)により新しい言葉ができた…と説明するようです。
そして18世紀中頃、「人々がリクリエーションのために行くところ」という意味になったのです。
19世紀中頃には、夏のリゾート、ニューヨークのサラトガに大きなトランクを持って旅行するとか、ロシアの夏のリゾート・ホンブルグでフェルト地を使った 帽子が売り出され流行したというような記述がでてきます。それで、温泉や海岸、遊園地もresortと表現されるようになりました。
このように、resortが、名詞で「保養地という地域・施設」、動詞で「保養地や保養地の施設に行く」意味になり、そのうち、おもに名詞部分がカタカナとなって日本語に収録されたようです。
少なくとも、リゾートは、① たびたび行く先、② 長期滞在先という、2つの空間を意味すると思います。「八十日間世界一周」というなつかしい映画はご存知の方が多いかと存じます。もとの題は「Le tour du monde en quatre-vingt jours」。ジュール・ヴェルヌなるフランスの小説家が1872年に書いたものを映画化したものです。タイトルにもありますように「 tour 」です。80日間を費やしましたが、同じところを繰り返し訪問していないのでre-sortではありません。まさに典型的な観光ということになります。
このようにリゾートは、観光、名所旧跡等を訪問して回遊するtourやsightseeingとは異なる意味をもちます。また、観光も含む、観光とは別の空間でもあります。それだけに、リゾートはコミュニティという概念にも、親和性があります。
したがって、たとえ大きな別荘があっても、ポツンと1軒・1家族がいただけではリゾートになりにくいでしょう。
*大谷私見
*参考サイト