◆緊急告知

関東通産局は、特定商取引法に違反する行為により、リゾートクラブを含む複合会員権を連鎖販売する㈱リゾネットに対し、15か月間、業務停止命令。会員を勧誘したら儲かるとか、会員はいつでも割引で泊まれるとかには要注意!
㈱リゾネットは当協会の「リゾネット」とは関係ない・・・e-Commerceを舞台にした新たな事案
 

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1-3:設計事務所とは丁々発止

 

Q:コンセプトがきまったら提案を求める。しかし、提案をそのまま受け入れるとは思えない。

A:設計者とはこれだけたくさん付き合ってきた。みな一流の事務所だ。コンセプトの打ち合わせのとき、リゾートホテルについて何かいい案を出せといっても、何かしら持ってはくるが、中身はさっぱりという場合もある。こちらからコンセプトを与えるとその先はプロだ。一流の仕事をする。

Q:そこが肝心なところ、ノウハウだ。

A:本当のノウハウだ。

Q:用地を特定して構想を重ねコンセプトを作りあげていく作業は、わたしひとりではない。伊藤勝康会長との打ち合わせが重要だ。彼はわたしにはないものを持っている。

Q:議論の生産性が高くなり、ある場面で急に充実していくであろう。

A:ひとりだと閃かないこともある。ふたりで議論していると閃く。ヴィラデステにも一緒に行った。この事業のスタートから一緒にやっている。コンセプトを議論すると得るものは大きい。

Q:ともに充実した経験があり共有されているので思考の生産性が高くなる。それだけいいものができる。理想的な状況だ。

A:この頃オープンしたある有名ホテル。期待していたのだががっかりした。関係者は褒めそやすが、この程度のものをよくぞ作ったなというレベルだ。カネもかかっていない。経営者が設計事務所にポンと渡してそれっきりで作ったような感じだ。普通の施主だと設計事務所になかなかものをいえない。それなりに能力がないといえない。予算は決まっている。丸投げすれば、設計事務所は「これでどうか」と提案してくるが、なにもいわなければ「その通りでよい」となってしまう。

Q:分業と統制の企業官僚制で取組めば、ご指摘のようなホテルになる可能性がある。外形的に規則に反しないことが重要だ。中味は各段階の中間管理者次第。逆にトップが下手に口出ししてデザイナーをつれてくると、その部分がちぐはぐになりかねない。

A:あの素晴らしい立地が生きない。味のないフツーのホテルになってしまった。高額の室料を取るのだから高級感をだすべきだ。高級さが出ていない。たとえばパリのリッツ(Ritz Paris)なら「おお」という感動がある。高級というのは豪華を意味しない。センスを意味する。センスの良い高級感だ。当社では会員様には何千万円という費用を負担していただく。センスの良い高級感を示す必要がある。

・・・

Q:「センスの良い高級感」とはなにか。このレベルになるとふつうに勉強しただけでは身に付かない。経験(いわゆる学習)が必要だ。

A:丁々発止で経験を積まないと会得できない。一流の設計事務所と議論を戦わせる。こちらも勇気がいる。

Q:実際にやってみないと分からない。

A:大体はわかっているつもりなのだが、こちらは素人なので、わからないことがでてくる。机上だけでは気が付かないこともある。現場で初めてわかることもある。だからモデルルームを3部屋くらい作る。それだけでも億単位の費用がかかる。それでもモデルルームは造って、それを見て吟味する。全体のデザインはすでにOKを出している。しかし部分々では、思い通りでない箇所もでる。いろいろ修正していく。終われば壊してしまう。

Q:コンセプトは全体だけでなく細部も支配している。

A:モデルルームは社員にも公開する。自信が沸く。こうしたチェックは重要なプロセスだ。これを理解できることも大切だ。

1-4:聞き手Qの感想

 

たかだか1時間のヒアリングだったが、原稿化するにだいぶ時間がかかってしまった。このヒアで伊藤代表から引き出した「センスの良い高級感」の意味は、パリのファッション業界でよく用いられるフランス語のéléganceに近いのではないかと感じた。

éléganceは、イタリア語ならeleganzaとなるが、同じ意味かどうかは判断に迷う。ルネッサンスを歴史に持つイタリアの業界人はパリを一段下に置きたがる傾向なしとは言えない。ヴィラデステは途中でイギリス風が加えられたとはいえ、フランス人ではなくイタリア人の設計であるからだ。

またフランス語のéléganceは、日本語では片仮名表記で「エレガンス」となるが、パリのクチュールメゾン(couture)でスタイリング(stylisme)関連業務に数年従事した経験者(その数は少ない)によれば、éléganceと「エレガンス」は同義語ではないと強調する。ファッション衣料の実務でéléganceというと、重い意味があるのであって、単にブランドの問題ではなく、よって銀座にはパリ・ミラノの店が並ぶのだと…。事実、パリ・ミラノのファッション衣料は世界で売れるが、日本の製品はなかなか難しい。

伊藤代表はRitzParisも高く評価し、いわばベンチマークに加えていた。よって彼はイタリアにあるヴィラデステをあえてフランス語のéléganceと解釈し、それを「エレガンス」と訳さずに、「センスの良い高級感」という、伊藤代表なりの「雅語」に託して、たとえば「八瀬離宮」に反映させた。筆者はこのように推理した。

ここに潜む思考のプロセス、いわば究極のノウハウが、リゾートトラストの会員制ホテル事業を成長させるひとつのおおきな源流になったのではないか。

そして、このような思考を具体の「かたち」にするのは、建築や設備そして内装・庭園などの設計家である。

八瀬という開発用地を前提に、伊藤代表らの頭脳に蓄積された「想い」を、建築資材等の組み合わせた「リゾートの空間」に変換していく。コンセプトという情報を空間という情報にいわば翻訳ないし翻案あるいは創造していく。そこで、このコンセプトのコアを推理するなら「ヴィラデステやリッツパリに凝縮されたrefinementélégance」にたどり着く。ただのまねではない。その空間にただよう「センスの良い高級感」の具現化である。

 したがって、そこにはまた膨大な知識や技術や施工能力が必要になる。日建設計と大林組(京都八瀬)あるいは観光企画設計と鹿島(湯河原)がその任を果たす。ときにあらたな解釈を思いつくであろうし、また誤訳もあろう。請負とはいえ、みえざる丁々発止は続くのであろう。さしあたりこのように考えて、2つの「離宮」を紹介する。

 

なお、以降は敬称略で記述する。
 また、本文中でのリゾートトラスト(株)関係者のインタビューに関する記述は、2018年現在のものである。

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