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㈱リゾネットは当協会の「リゾネット」とは関係ない・・・e-Commerceを舞台にした新たな事案
 

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【7】もうひとつの原点…Ritz Paris

7-1:「王子が自分の家で望むことができるすべてのエレガント」を提供

 リッツパリ(Ritz Paris)は伊藤與朗がもうひとつモデルとして提示された。しかし、簡単な年表を作成するにも、その作業は筆者の手に余る内容がある。
 このホテルは長い歴史と豊富な登場人物、年代物の什器備品にあふれ、リッツパリを経営史や観光学的に理解しようと思ったら、ベルエポック前後のフランス(のみならず西欧)の社会経済事情や建築史などからも検討する必要があるからだ。この作業を放棄したいのはやまやまだが、行きがかり上、進めることにする。
 しかし、興味津々の話題は尽きない。
 ココシャネルがこのリッツパリに30年も「下宿」して、400M先のカンボン通りにあるシャネルのメゾンに「通勤」するのは理解できる。しかし、アメリカの著名な小説家のヘミングウェイもまたこのリッツパリに「下宿」した。気まぐれにしては透徹しすぎている。事実上の「会員制ホテル」だったのかもしれない。
 また、これほどのホテルでも、創業者(César Ritz)の後継者(次男Charles C. Ritz)の高齢化にともない、顧客もまた高齢化して、業容が退潮した。後継者未亡人は創業80年余にしてわずか2000万ドルでエジプトの実業家(Mohamed Al-Fayed)に売却したとある。
 本当なのだろうか。
 そして、その事業家の子息が英ダイアナ妃の交通事故に同乗して死亡するなどという出来事を生む。いわば社交界のできごとだからありうるけれども、セザール・リッツは予期していたのであろうか。
 深みにはまるときりがない。したがって、筆者としてはWikipedia(仏・英・日版)の焼き直しくらいに留め、資料としてリッツパリ略史を後掲した。また、内部に興味のある方は、たとえば、画像データベースPinterestなどで検索していただきたい。
 以下、伊藤與朗が、このリッツパリを、モデルとして高く評価した意味を、推測してみようと思う。彼の言う「センスの良い高級感」が、このリッツパリに具現化したその源に、筆者の推測で向かってみたい。

 1:1898年、セザール・リッツ(以下リッツ、ホテル名はリッツパリ)は現用地を探したが、リッツ・シンジケートは価格と面積に難色を示し、結果として、リッツの個人事業になったこと。よって、リッツは事業の進め方について完全な裁量権をもち、そのうえでこのホテルの基本方針(いわばコンセプト)を決めた。

 2:什器や備品の選択も、リッツの感性を基準にして、一つひとつ吟味し、当時超一流のインテリア・デザイナーに指示し、特注も含め調達した。

 3:改修(リッツパリは既存建築物の改修)もリッツのコンセプトに従い設計者を選択する。リッツはなんとアール・ヌーヴォーを主張したが、選ばれたデザイナーはアール・ヌーヴォーはバンドーム広場に似合わないという。「自ら雇った設計家と意見が対立、数ヶ月に渡る議論の末、折衷案により新しいスタイルを確立」したとある。
 この建築家は、リッツより10歳若いチャールズ・ムエス(Charles Frédéric Mewès)であろう。彼は、18世紀フランスのエレガントにこだわり、アールヌーボー様式・現代様式を避け、ルイ16世の論理的、空間的対称性を志向する建築家だった。
 英国王立建築家協会から、「フランスの良き知的資産を蓄えた本格的人物(The true type of the French intellectual of good stock)と評価された。Pinterestで作風が豊富に検索できる。そして両者は折衷案にたどり着く。このときのリッツの新進気鋭建築家への対峙は、筆者から見ればホテル経営者の鏡だと思う。

 4:リッツがムエスに与えた指示のなかに、裕福な顧客に対し、「王子が自分の家で望むことができるすべてのエレガント」を提供することがある。
 「He stated that his purpose for the hotel was to provide his rich clientele with "all the refinement that a prince could desire in his own home."」出典:英語版Wiki
 注目すべきはこの文中のrefinementである。あえて、エレガントと訳したが、refinementは不可算名詞 洗練,上品,高尚,優雅.(研究社 新英和中辞典)となる。たとえば、a wine of great delicacy and refinement は、素晴らしい繊細さと洗練されたワイン となる。
 伊藤與朗のいう「センスの良い高級感」とは、このrefinementの意味を、人間社会にあてはめたものかもしれないと想像した。ただし、リッツ本人がこの単語を使ったかどうかは定かでではない。本執筆者(大谷)の調査不足である。
 以下次ページに続く
 出典:いくつかの言語の Ritz Paris のホームページから。https://www.ritzparis.com/1en-GB 他

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